炭炊き蒸し釜戸は、昭和31年当時主にお寿司屋さんで使われておりました。
『寿司屋はシャリが命』と言うぐらい、お寿司屋さんはおいしいご飯を炊くことにこだわっていたので、この蒸し釜戸が使われていたと思われます。
当時当店で使用していた蒸し釜戸は、愛知県で製造された常滑焼の3升釜で、今から20年以上も前に製造する窯元が無くなり、一時はその設計図を基に中国で製造したものが出回りましたが質が悪く、業務用には向きませんでした。しかし、当店のこだわりの1つでもある蒸し釜戸が無くなってしまうと店の存続にも関わる大問題となることからいろいろ考えた結果、平成16年に当店オリジナルの炭炊き蒸し釜戸を開発することに致しました。やはり最低でも日本の「土」を使って製作しなければ良い釜が作れないと思い、常滑焼以外で耐火性・気密性・保温性のある素材は無いものかと調べたところ、七輪に使用されている珪藻土が一番良いことがわかりました。能登半島の地層は珪藻土で形成されており、日本で生産される七輪・その他珪藻土製品のほとんどは、石川県の能登半島で作られています。
珪藻土製品には ① 無垢製品 ② 型流し製品 の2種類の製品があり、
①は「切り出し」という製法で珪藻土の粘土層を切り出し、それを削って形にし、炉で焼いて完成させた製品です。切り出す粘土の重量は七輪程度でも20~30㎏はあり、ちょっと大きい物になると数百キロととても重く、切り出した粘土層に少しでも亀裂が入っていると使えないので、大変手間が掛かりリスクも多い製法です。従って価格も少々高価な物となります。しかし完成品はとてもクオリティーが高く、使う毎にその良さが伝わってまいります。
②はコンクリートのように珪藻土の粉末を水に溶き、型の中へ流し込んで固め、炉で焼いて完成させた製品です。この製法は、手間もリスクも少なく、比較的安価な製品ですが、①の製品に比べるとやはりクオリティーが劣ります。
当店は①の製法で炭炊き蒸し釜戸を製作できる窯元を探し、何度か試作を重ね、試行錯誤した結果現在の珪藻土でできた炭炊き蒸し釜戸までたどり着きました。まだまだ改良の余地はあるとは思いますが、今のところ業務に支障なく使用可能です。ご飯の炊き上がり具合も納得できるクオリティーをキープしております。これらのこだわりにより当店では、世界でたった1つの炭炊き蒸し釜戸で毎日おいしいご飯を炊いております。そして1人でも多くのお客様に食べていただきたいと願いながら・・・・・・。